PHS停波を起点に病院でのスマホ乗り換え需要が急増
2016年に創業した医療系ベンチャーのメドコム様。「医療の情報革命によって、全ての人々を幸せにする」ことを企業理念に掲げ、医療機関専用スマートフォン「メドコム」のサービス提供を軸に事業を展開しています。
ご存知の通り、多くの医療機関では連絡手段としてPHSが利用されています。しかし2021年3月の個人向けサービスに続き、2023年3月をもって法人向けPHSサービスが終了。これを機に、PHSからスマートフォンへの乗り換え需要が急増しています。
佐藤氏ら幹部とNTTドコモ時代からの長い付き合いだという田中氏。創業時から関わり、2021年に正式にジョインした
NTTドコモ、日本アルトマークのOBである代表取締役社長 兼 CEOの佐藤康行氏をはじめ、通信と医療情報ビジネスに精通したメンバーが名を連ねる同社は、早い段階から病院内での4G(LTE)回線を用いたスマートフォンサービスに着目。PHS停波をにらみ、2020年1月にメドコムの提供を開始しました。メドコムとは業務提携先の一般社団法人日本病院会から取った名称で、強固な関係性を活かして導入医療機関数は年々増加。2023年5月には利用者数が2万人を突破し、現在も拡大を続けています。
システム導入を司るシニアマネージャーの田中氏は、急成長を遂げた要因について「PHSは情報伝達手段が音声通話とショートメールのみですが、スマートフォンであれば多様なアプリケーションを利用可能。これにより、院内業務の大幅な業務効率化につながることを実感していただけたからです」と話します。
メドコムでは電話、ナースコール連携、チャット、カメラ、ログイン管理機能、モバイル端末管理(MDM)などを標準搭載。例えばナースコールはアイホン社、ケアコム社製品と連携し、応答するとカメラで患者の様子がわかる仕様です。「顔を見ながら話せるので、緊急性が高いかどうかがある程度判断できます」と田中氏。こうした機能は両社と共同開発のもとで運用しています。
院内のPBXと放送設備を接続した緊急コールシステム、薬剤師の業務を支援する「ヤクチエ」シリーズ、外国人スタッフや患者向けの翻訳アプリなど、積極的に他社アプリ/サービスとも連携し、利便性を高めています。
「使い方は無限大。1人1台のスマート情報ツールが配布されることで、看護師や医師の働き方が劇的に変わりました。メドコム自体が医療機関にとっての情報プラットフォームだと捉えています」(田中氏)
メドコムのサービス画面。プライベートのスマートフォン同様、タップして直感的に利用できる。Androidスマートフォンのみの提供となる
電子カルテ連携とクラウド接続をセキュアな環境で両立
メドコムのサービスは通信キャリアの閉域網を介して病院内のVPNルーターとPBXを接続。ナースコールをはじめとする標準機能はこのネットワークによって厳格なセキュリティを担保しています。
さらに、先述したようなクラウドサービスを便利に使えることがもう1つのメリットです。ただし、病院にはより切実なニーズがあります。それが電子カルテとの連携です。院内・院外問わずにどこからでも電子カルテにアクセスできれば、より迅速で適切な医療サービスの提供につながるためです。
クラウド接続と電子カルテ連携を両立するには、インターネットを経由せずにいかにセキュアな環境を構築するかが焦点となります。そこで田中氏は院内VPNルーターとクラウドを結ぶVPNサービスを検討し、NTTスマートコネクトのCXCを選択しました。
CXCは安心・安全にプライベートなネットワーク環境でAWS、Azure、GCPなど代表的なクラウドサービスを利用できるのが特徴です。インターネットを経由しないため低遅延で安定した通信が可能となり、企業、自治体など数多くのお客さまに活用いただいています。田中氏はCXCを採用した決め手を次のように語ります。
- ■サービス提供イメージ
「コストを抑え、なおかつ高品質なVPNサービスを検討した結果、最もリーズナブルな構成が日本通信ネットワークのFLESPEEQ VPNとNTTスマートコネクトのコラボレーションモデルでした。電子カルテは機微な情報の集合ですから、万が一のことがあってはなりません。今回のモデルでは病院に設置したルーターが一切インターネットと接触せず、クラウドまですべて閉域網で接続できるので、セキュリティレベルが格段に向上しました」(田中氏)
負担を軽減し効率化を加速、病院DXが現実のものに
電子カルテ連携はオプション機能として提供していますが、昨今は導入当初から組み込む病院も増えています。看護師が行なう点滴薬交換の3点認証を大幅に簡素化したり、帰宅後の医師が自宅から電子カルテを閲覧して患者のバイタルデータを確認したりなど、画期的な病院DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現できるからです。
「標準機能だけのプランからスタートしても、途中から電子カルテ連携のオプションを加えるケースが多いです。メドコムのプラットフォームは病院DXを進める上で必須になります。この4月から3年契約が経過してリプレースするお客さまが後を絶たないことがそれを証明しています。だからこそ、盤石なセキュリティを保つためにもNTTスマートコネクトのCXCは不可欠です」(田中氏)
導入までのスピードも早く、「丁寧にサポートしていただける体制は非常に助かる」と田中氏は評価します。NTTスマートコネクトとも順調な関係が続いており、2023年の秋には某大学病院で3000台規模の導入を予定しています。
「通常は200〜300台規模ですから、かなりの大型案件になります。しかも大学病院は基幹病院ですので、万全を期してCXCの帯域確保型(10Mbps〜1Gbps)プランを採用する予定です。この後にも大型案件が控えているので、より協力関係を深めていきたいですね」(田中氏)
ナースコール連携のデモを説明する田中氏。徘徊防止のためにベッドに設置した起き上がりセンサーとの連携機能などもあるという
セキュアかつ高品質なCXCが医療業界のデジタル化を後押し
現在は病院内に特化したプラットフォームですが、ゆくゆくは厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムにも拡大したいと田中氏は展望を述べます。
「地域の中核病院を中心に、中小病院、クリニック、介護施設などと情報連携した仕組みを構想しています。地域包括ケアシステムが進んでいない理由は、円滑に活用できる情報基盤がないからです。メドコムのスキームを発展させて、その課題解決を支援していきたい。これらを閉域網で円滑につなげることができれば、さらに医療業界に貢献できると考えています」(田中氏)
このように、労働集約型と言われる医療の領域でも着々とデジタル化が進んでいます。そこで鍵を握るのはセキュアで高品質、そして柔軟な接続形態を持つ閉域網にほかなりません。信頼性の高いNTTスマートコネクトのCXCが、これからも医療業界のDXを後押ししていきます。
※当記事に記載されている内容は、2023年6月現在のものです。