仮想化基盤のライセンス値上げで既存環境からの移行に迫られる
沖縄県浦添市に本部を置くコープおきなわは、沖縄県全域で事業を展開。1976年に前身となる「沖縄南部市民生活協同組合」が設立され、2026年2月には50周年を迎えます。スタート時の組合員数は810人でしたが、2024年度には24万5000人に到達しました。生活用品の配達、スーパー、夕食宅配、住宅、電力、葬祭、共済・保険などのさまざまなサービスで沖縄県民の暮らしを支えています。
コープおきなわでは2017年まで自前のサーバーによってオンプレミスで業務システムを運用していました。その後は仮想化基盤へと切り替え、外部のデータセンターで運用。以降は大きな問題もなく稼働していたそうです。

コープおきなわの情報システムを統括する宇良氏
ところが仮想化基盤ライセンスの大幅な値上げに見舞われます。情報システム部門を司る宇良(うら)氏は「サーバーのランニングコストを含めると約6割もコストが上昇する見込みとなり、従来環境での継続が困難になりました。そのため、別のインフラ基盤へのシステム移行が急務となったのです」と振り返ります。
同様の問題は世界各地で発生していますが、コープおきなわでは移行先にパブリッククラウドのAWS(Amazon Web Services)を選択しました。「最も大きかったのは、将来の事業展開を見据えた際の柔軟さ。AWSは拡張性が高く、パブリッククラウドの第一人者として多様な業界での実績があるからです」と宇良氏は選定の理由を説明しました。
盤石な閉域網に加え、最初から最後までお任せできる内容が決め手に
仮想化基盤のコストが2025年2月から上がる事情もあり、宇良氏は2024年度内のクラウドリフトを想定して複数のベンダーへ提案を依頼。クラウド化するシステムにはお客様に関わるアプリケーションもあったことから、「移行期間は長くて1カ月程度」と計画していました。しかしいずれの提案も構築期間が約半年と長く、計画の実現には程遠かったと話します。
そうした中、通信・ネットワーク関係を一任しているNTT西日本を介して紹介されたのがNTTスマートコネクトです。もともとはAWS環境に閉域接続可能なサービスとしてCXCを検討したことがきっかけでしたが、話を進めるうちに理想の形が見えてきました。
「値上げの問題があるまではクラウドへの移行をまったく考慮していなかったため、我々にはほとんどAWSに関する知識がありませんでした。その悩みをNTTスマートコネクトに相談したところ、構築から運用・保守までをカバーするCI /マネージドサービスを提案していただいたのです」(宇良氏)
CI /マネージドサービスはパブリッククラウドを対象に、システム構築、安定稼働に必要な監視、運用作業代行、障害復旧対応などをワンストップで提供するサービスです。当初、宇良氏は本サービスを知りませんでしたが、「提案を受けて、ここまで対応してもらえることに驚きました。間違いなく、CXCとCI /マネージドサービスの2つがNTTスマートコネクトを選んだ決め手です」と採用のポイントを挙げました。
「それまではデータ系がシステム構築のベンダー、ネットワーク系がNTT西日本と分業体制で進めてきました。もしベンダーが2社に分かれていた場合、担当範囲の調整や連携に手間がかかり、移行が遅れてしまう懸念がありました。限られた時間の中で迅速に構築するためにも、一括ですべてを任せられる体制はとても魅力的でした」(宇良氏)
2025年1月上旬に発注を受けた移行プロジェクトは、同年3月までに完了しました。「事前調査や準備も含め想定以上に早く進み、前の環境からシームレスに移行することができて満足しています」と宇良氏。新たな仕組みを導入するうえではコスト面も重要ですが、「その点でもNTTスマートコネクトの提案内容が最も条件が良く、コープおきなわの予算にあわせて柔軟に対応していただきました」と高く評価します。
移行でもトラブルなし、セキュリティ・保守含めた手厚い体制に安心感
具体的には「電力事業の顧客管理」「店舗日報/商品管理データベース」「賞味期限管理、売上、仕入管理アプリ」「給与管理」など合計6つの業務システムを移行。最初に影響の少ない電力関連のシステムからスタートし、段階的に重要なシステムの移行を進めました。
「一括での移行は業務に多大な制約を与える恐れがありましたが、今回はその影響も最小限に抑えられ、トラブルもほぼありませんでした。基本的にはシステムを稼働させたまま同期を取りながら進め、差分データが発生したときに2〜3回、数時間程度サーバーを停止しただけで済みました。NTTスマートコネクトがV2V(Virtual to Virtual)に関する豊富な知見を持っていたことにも助けられました。以前、オンプレミスからデータセンターに切り替えたときに苦労した経験が嘘のようです」(宇良氏)

NTTスマートコネクトの担当者とはグループウエアを通じて情報共有を図っている
2025年3月から動き始めたAWS環境は順調に稼働しており、「システム自体がかなり快適になりました。当初は不安でしたが、現在は安心して利用できています」と宇良氏は話します。実際の効果について深堀りすると、次のように答えてくれました。
「まずは24時間365日の監視体制が整っていることです。以前は障害が起きてから初めて問題に気づく状況でしたが、AWSにはトラブルの予兆を検知して事前に対応してくれるツールがあるため現場に影響が出る前に状況を把握でき、先手を打った対応が可能になりました。セキュリティ設定に関してもプロの視点で対策してもらえているので大きな安心感があります」(宇良氏)
ランニングコストも値上げ前に近い水準に抑えられており、最大の課題であったコスト上昇の問題は解決できています。
「大幅なコスト削減があったわけではありませんが、安定した水準を維持できている点で問題はなく、保守体制も大きく向上したため、全体的に非常に良い効果をもたらしています。例えば移行してすぐの時期にAWS本体で電源トラブルが発生し、6台中1台のサーバーが停止したのですが、NTTスマートコネクトのSEがAWSとやり取りし、短時間で復旧できました。私が直接AWSに問い合わせていたらもっと時間がかかっていたでしょう。改めて手厚い保守・サポート体制のありがたみを感じました」(宇良氏)
クラウドを中心にしたデータ活用で未来を切り開いていきたい
インフラ基盤の管理から解放されたことにより、コスト抑制のほか、業務効率化などの副次的な効果をもたらしています。
宇良氏は「業務効率化により生まれた余剰の時間を、お客様へのきめ細やかなサービスの改善や、社内のIT教育の充実に充てたいと考えています」と意気込みを語られました。さらに、今後の展望として、AWSを中心に据え、顧客売上データの分析用サーバーとの連携や、需要予測への応用など、多方面への拡大を視野に新たな取り組みを進める考えを示されています。
「現在も需要予測の仕組みはありますが、上手く機能しているとは言えません。より正確で説得力のあるデータを用いて週単位で予実管理ができる体制を整えていく必要があります。そのためにも拡張性に富んだAWSのポテンシャルをどんどん引き出していきたいですね」(宇良氏)
「スマートコネクト CI/マネージドサービス」に移行したことでコスト抑制だけでなく、安定稼働、業務効率化、そして事業の新たな可能性を手に入れたコープおきなわ。これからもNTTスマートコネクトはCXCやCI /マネージドサービスといったサービスを通じて、あらゆる業界のDXをサポートしていきます。