オンプレミスをやり尽くして知識を吸収、クラウド移行への機は熟した
福岡県北九州市に本社を置く第一交通産業グループ様は、タクシー保有台数8201台(2024年3月末現在)、グループ全従業員数約1万3000名と、日本最大級の規模を誇るタクシー会社です。福岡県を拠点に全国34都道府県でタクシー事業を行なっています。
現在は主力のタクシーに加え、不動産、医療・介護、旅行、船舶など幅広く事業を展開。2024年にはグループの大分第一ホーバードライブが15年ぶりに大分空港と大分市を結ぶホーバークラフトの運航を復活させる予定で、大きな注目を集めています。取材した小田典史氏は大分第一ホーバードライブ代表取締役社長を兼務。今回は大分市のホーバーターミナルに訪問してお話を伺いました。
自らキッティングまで手がけ、システムを知り尽くした小田氏
小田氏はIT戦略室(旧電算室)に配属されて以降、積極的にオープンソースを活用してグループ内のシステム構築に励んできました。キッティングでは自らが手を動かし、サーバー系をLinuxに集約して全国営業所のネットワークシステムを完成させるなど、「オンプレミスはハード構成を含めてやり尽くした感がありました」と振り返ります。
オンプレミスで稼働していたのは売上、労務管理、人事管理、経理、財務などのシステムです。一方、第一交通産業グループ様は156社もの連結子会社を抱えるため、現地にデータベースを置くモデルは現実的ではないと判断。データ活用が主流になった背景も重なり、システムのクラウド移行を模索してきました。
「システムには全社員データが集約されているだけに、とにかく安定したサーバー環境を構築することに注力してきました。それでもたびたび、ハードが突然停止するトラブルがありました。コールドスタンバイまで用意して冗長化に努めていましたが、一度も利用せずに保証期間が終わることもあり、会社に無駄なITコストを払わせているとの負い目があったのも事実です。クラウドに移行すればそれらの問題は基本的に解消されますし、拡張もサーバー購入と変わらない費用で可能になります。電気代のことを考慮しても、もはや手元にシステムを置く時代は終わったとの感覚がありました」(小田氏)
AWSの知名度と安定感、NTTグループのバックアップが決め手に
小田氏はAWSの選定理由について「クラウドに移行するのであればAWSと考えていました。知名度と安定感が抜群ですから、選択に迷いはありませんでした」と語ります。
しかし、クラウドに関する商品知識はあったが移行・新規構築・運用するノウハウがなかったことから、全国規模で通信ネットワークを契約しているNTT西日本に相談。NTT西日本を通じてNTTスマートコネクトの「AWSライセンスサービス」「スマートコネクト CI /マネージドサービス」を紹介されました。
「AWSライセンスサービス」ではNTTスマートコネクトがAWSアカウント設定の代行、円建ての支払い窓口、問い合わせ窓口を担当します。さらに一歩進んだ「スマートコネクト CI /マネージドサービス」はオンプレミスからクラウドへシフトする為に必要なシステム構築、安定稼働の監視、運用作業代行、障害復旧対応などをワンストップで提供するサービスです。
「我々はアプリケーション開発に専念したかったので、AWSのインフラ環境構築部分を設計からCI/マネージドサービスに依頼しました。もともとNTTスマートコネクトのホスティングサービス『スマイルサーバ』を利用していた経緯もありましたし、何よりNTTグループのバックアップがあるので信頼してお任せできると考えました」(小田氏)
安定稼働に不満なし、交通DXの基盤としても期待がかかる
NTTスマートコネクトとは2024年1月に契約締結、まさに本格稼働が始まったばかりです。現時点ではAWSとオンプレミスを併用しているものの、AWSへの完全移行を前提としてシステムのモダナイズを進めています。
「より効率的かつ迅速に業務が推進できるようになるのはこれからです。ただし、IT戦略室のメンバーが何も不満を述べていないところを見ると、安定稼働しているのは間違いありません。セキュリティに関しても大いに期待しています。そもそもオンプレミスで運用していたのはセキュリティを強化するためですが、今後AWS上ではタクシーの営業データ活用を視野に入れています。高いセキュリティレベルでお客様のデータを守り、有益なデータ活用に挑んでいきたいですね」(小田氏)
すでにアプリケーション開発にも着手しています。第一交通産業様はタクシー内に設置したタブレットに情報を集約する「スマートメーター」によって交通DXを加速させる計画で、まずは乗務員の勤怠情報や売上情報を管理するアプリを開発中です。
「2024年問題の影響もあり、精度の高い勤怠情報を管理する必要が出てきました。リアルタイムで情報を把握するためにはダイレクトにクラウド上にアップすることが必須になってきます。スマートメーターに関する仕組みは国やタクシー業界をあげての取り組みで、早ければ来年にも国会に上程される見込みです。その動きを踏まえると、AWSへの移行は必然だったと言えるでしょう」(小田氏)
柔軟なデータ活用を実現できる体制は今後の事業に不可欠
スマートメーターは勤怠管理のみならず、さまざまな効果をもたらします。小田氏は「全国のタクシー会社である程度の整備が進めば、今の時点でどれだけの空車があって、どこに需要があるのかがわかるようになります」と話します。需給バランスの可視化は、全国34都道府県でタクシー事業を展開する同社にとっても新たな付加価値を創出する契機となりそうです。
「我々にはそれぞれの地域特性を深く理解している強みがあります。そしてデータを活用する仕組みを築き上げて横展開することで可能性はさらに広がります。そうなると、柔軟なデータ活用を実現できるAWS、そしてNTTスマートコネクトをはじめとするNTTグループの盤石な運用体制は心強い存在です」(小田氏)
就航を待つホーバークラフトとともに
第一交通産業グループ様ではタクシー事業を足がかりに、グループ内でのAWS拡大が決定しています。小田氏は「ホーバークラフトにもデータ活用が求められるのでゆくゆくは活用していきたい」と展望を語りました。今後も多方面にわたる事業のインフラとして、NTTスマートコネクトが提供するAWSライセンスサービス、CI/マネージドサービスが貢献していきます。